年齢を重ねるにつれて増えてくる”白髪”に悩んでいる人は多いですよね。
でも、そもそも白髪はどうして生えてくるのでしょうか?今回はそんな白髪が生える理由やメカニズムをまとめてみました。
黒髪が生えるメカニズム
元々黒髪の人にとって、白髪は髪の毛の異常。そんな白髪が生える理由を正しく理解するためには、黒い髪の毛がどのようなメカニズムで生まれるのかを知っておく必要があります。
髪の毛の黒色はメラニンから作られる!
人間の身体にある黒色は、ホクロにしても日焼けにしても全てメラニンから作られます。もちろん髪の毛の黒っぽい色もメラニンによるもの。
メラニンには黄色メラニンと呼ばれるフェオメラニンと黒色メラニンと呼ばれるユーメラニンの2種類があり、それらの含有量によって髪の毛の色は決まってきます。
具体的には、フェオメラニンが多くユーメラニンの量が少ない場合は金髪に、フェオメラニンが少なくユーメラニンが多い場合は黒髪になることになります。そして、どちらのメラニンも含まれていないものが白髪となるのです。
メラニンが髪の毛に混ざるメカニズム
そんな髪の毛の色を決めるメラニンですが、実は髪の毛が作られた瞬間には全く含まれていません。それでは、どのようにして髪の毛の色をつけていくのでしょうか?
メラニンが細胞に色をつけるまで
まずは、メラニンが細胞に色を付けるメカニズムから見ていきましょう。
メラニンはメラノサイトにあるメラノソームで作られます。メラノソームではアミノ酸のチロシンをチロシナーゼなどの酵素で酸化させることで黒い色が生み出されていきます。
生み出されたメラニンはメラノサイトの樹状突起(木の枝が広がったような形をした部分)を通ってメラノソームごと排出されて周りの細胞に取り込まれていくことになります。
そうして、メラノソームを取り込んだ髪の毛の細胞が着色されていくというわけです。
髪の毛のメラノサイトがあるのは、髪色をつけるベストポジション!
髪の毛の場合、このメラノサイトは毛根にある毛乳頭と毛母細胞の間に点在し、長く枝を伸ばしています。
毛母細胞は細胞分裂によって毛髪を生み出し、毛乳頭はその毛母細胞に血液から栄養や酸素を送るという大事な働きがある器官。
メラノサイトはそれらの間にあることで、新しい髪の毛に徐々にメラニンを送ることができるのです。
そうして、毛球を過ぎる頃にはすっかりと毛根の外の髪色になっていきます。
メラニン細胞が届くのはメラノサイトの付近だけ。そのため、毛球を過ぎてしまった髪の毛の色は傷んで色素が抜けたり外から着色されたりしない限りは変わることはありません。
黒髪が白髪になるメカニズム
黒髪が生えるメカニズムから、メラニンが毛母細胞に取り込まれなければ白髪になってしまうということがわかります。
それでは、どうして毛母細胞に取り込まれなくなってしまうのでしょうか?
それには次の2つの原因が考えられます。
1. 作られるメラニンがなくなっている/量が減っている
2. 毛母細胞にメラニンを供給しにくくなっている
これら2つの原因について、もう少し詳しく掘り下げていきましょう。
1. 作られるメラニンがなくなっている/量が減っている
まずは、作られるメラニンがなくなってしまったか減ってしまったためにメラニンが毛母細胞に取り込まれなくなっている可能性についてです。
作られるメラニンの量が減少すれば作られる色素は減るため当然髪の色は薄くなりますし、メラニンが作られなくなれば白髪になってしまいます。
そんなメラニンの量が減ったりなくなったりするには次のような理由が考えられます。
病気が理由の場合
白髪の原因には、チロシナーゼが生まれつき少なかったり早老症候群だったりなど遺伝や先天的な疾患が原因だということもあります。
また、後天的な病気でもメラノサイトやメラノソームに影響を与えてしまい、メラニンの生成が滞ってしまうことがあります。
メラノサイトやメラノソームが「なくなる」「少なくなる」「働かなくなる」という状態になれば、当然ながらその中でメラニンは作られることもなく減ってしまうことになります。
後天的な病気で起こりやすいのが、白斑や円形脱毛症。メラノサイトが一時的、または長期的に働かなくなることがあるということが分かっています。
メラニンの生成が滞っているのが理由の場合
貧血や血行不良、栄養不足などの場合は、チロシンなどのメラニンを作るための材料が毛乳頭やメラノサイトまで届かず、メラニンの生成量を減らしてしまう可能性が指摘されています。
タンパク質やビタミンが足りていないとチロシンを生み出す力が弱まってしまう可能性がありますし、ミネラル不足でも貧血や血行不良などの症状は現れやすくなります。
また、栄養だけでなく、運動不足や睡眠不足、喫煙習慣など不健康な生活習慣によっても引き起こされやすくなりますので注意してください。
そして、加齢による白髪も「作られるメラニンがなくなっている/量が減っている」という原因に当てはまります。というのも、加齢でメラノサイトの数が減りやすく、メラニンを作る酵素チロシナーゼの機能や生成量も年齢とともに減少傾向にあるからです。
また、チロシナーゼは活性酸素によって作られにくくなってしまうということもあるため、紫外線やストレスなどが原因で白髪ができてしまう可能性もあります。
2. 毛母細胞にメラニンを供給しにくくなっている
メラノサイトでは、メラニンはメラノソームの中で徐々に作られながら樹状突起を通過していきます。
そのメラノソームの輸送の途中で何かのトラブルが起こった場合にも、メラニンを毛母細胞に供給しづらくなるため髪の毛の色素は薄くなってしまいます。
例えば、頭を掻いたり髪の毛を抜いたりすると、毛根や頭皮が傷んでメラノサイトや毛乳頭が欠損・消失してしまうことがあります。
メラニンはメラノサイトの樹状になった管を通って毛母細胞に取り込まれるわけですから、毛乳頭の消失はもちろん欠損もメラニンの運搬は阻害されてしまいます。
傷に関しては、こういった外傷以外にも紫外線を多く浴びるなどで発生した活性酸素がメラノサイトを傷つけてしまう可能性も指摘されています。
また、メラソームが単純に外側へ向かわなかったり毛母細胞に上手く取り込まれなかったりといったトラブルが起こることもあります。
メラノソーム輸送のトラブルに関しては、まだ分かっていないことも多いですが、メラノソームをメラノサイトの核付近から細胞膜へと届ける運動を促進できれば白髪を改善する力がアップするのではないかということが近年の研究で示唆されています。
白髪ができるメカニズムを知って予防・改善を!
白髪ができる理由について、黒髪ができるメカニズムから説明してみましたが、いかがでしたか?
白髪ができる理由については1つだけが原因ではなく、例えば加齢に栄養不足や疲労が重なっているというように複数の原因が重なってしまっている可能性もあります。
メラノサイトからメラニンの供給が行われるのは、毛根の奥深くの毛母細胞まで。そのため1度生えてしまった白髪はずっと白いままですが、原因を特定して改善していけば根本から元通りの色に戻せることもあります。
実際に、毛先だけ白髪で途中から黒くなっている髪を見たことがあるという方は多いのではないでしょうか?
そんな途中から色が変わっている髪の毛は途中でメラニンの生成や運搬が復活した証拠。諦めずにしっかりと対策をしていきたいですね。